膠原病

筋炎(多発性筋炎・皮膚筋炎)の症状


筋肉症状は、当初は脱力感が中心になります。太ももの筋力が落ち、立ち上がったり、階段を上るのが難しくなることもあります。筋炎(多発性筋炎・皮膚筋炎)の症状について紹介します。
筋炎にみられる症状の図

筋炎の症状の特徴

筋炎の初期症状
筋炎の初期症状としてよくみられるのは、「からだがだるい」、「疲れやすい」などの症状です。これらの症状はゆっくりと現れるのがふつうです。このほか、微熱、関節痛、レイノー現象などもよくみられます。やがて、「ふとんが持ち上げられない」、「階段の昇降が不自由」、「トイレでしゃがんだり立ち上がったりするのが困難」などの症状が出はじめます。
これは、上腕部や大腿部といったからだに近い部分の筋肉が侵されるためです。また筋肉を握ると痛みが出たり、あるいは筋肉の萎縮なども徐々にみられるようになります。さらに病気が進行すると、「食べ物がのみ込みにくい」、「声がかすれる」、「ベッドから起き上がれない」などの症状がおこります。こうなると病気はかなり進行しており、早く治療をしないと大変なことになります。
一部の患者さんでは、間質性肺炎がおこることがあります。これにはじわじわとおこってくる慢性のタイプと、急速におこる進行性のタイプとがありますが、とくに進行性の場合にはきわめて重症となります。この場合には、運動時の息切れ、空咳などがおこりますので注意してください。
急性間質性肺炎がみられるのは、ほとんどが皮膚筋炎の場合です。筋炎の症状はあまりはっきりしないのに皮膚筋炎特有の発疹がある このほか 全身性エリテマトーデス(SLE)強皮症(SSC)シェーグレン症候群などに合併することもあります。

筋肉の症状

発症


発病はゆるやか。目の単位で変動することはありません。関節痛だけが、何年か前に先行することがあり、その場合は関節リウマチと似ています。皮膚筋炎では、皮壕が先にあり、筋肉の症状は1年ほど後に出ることもめずらしくありません。


●当初は、力が入らなかったり、力が扱けた感じ(脱力)があります。また、筋肉が痛んだり、疲れやすく(易疲労)なりますが、自覚症状がないこともあります。

筋症状が現れる部位


四肢の近位筋(中心部に近い筋肉)、胴体の筋肉、呼吸筋、嚥下筋(後咽頭筋)など。症状は左右対称にあらわれるのが特徴で、上肢よりも、下肢の筋力低下のほうがしばしば先にあらわれます。


●筋力の低下が、少しずつあらわれるようになります。しゃがんだ姿勢から立ち上がれない、階段の〝上り〟が難しい、バスに乗る時にステップが上がれない、といった「太もも」の症状。髪をとかすときなどに腕が上がらなくなる、物が持ち上げられなくなる、などの「上腕」の症状.寝ている姿勢から頭を上げるのが難しくなる「くび・肩」の症状などが、じわじわと進みます。
※なお、階段を〝下りる〟 のが難しくなるのは、多発性筋炎とは違い、遠位筋の病気による症状です。


●重症になると、後咽頭筋や胸郭呼吸筋にまで炎症が及ぶことがあります。筋炎では、横紋筋に炎症が起こりますが、のどの奥の食道に近い部分(後咽頭筋)も横紋筋でできています。ここに炎症が及ぶと、物が飲み込みにくくなります。飲み込んだものが器官にはいると、窒息または肺炎の危険性が高くなります。
また肋間筋や横隔膜などの呼吸筋の筋力が低下すると、換気不全を起こし、一時的に人工呼吸器が必要になる場合もあります。

皮膚の症状

●皮膚筋炎の皮疹は、ときに治療をしなくても消える薄いものもあれば、難治性の場合もあります。日光が当たると悪化したり、かゆみを伴うこともあり、さまざまなあらわれ方をします。


●皮疹は、筋症状に先行することもあれば、同時に出たり、またあとからあらわれる場合もあります。初め多発性筋炎と診断され、のちに皮疹が出て、診断が皮膚筋炎に変更されることもあります。

皮膚筋炎であらわれる度疹


ヘリオトロープ疹…上まぶたの皮疹。むくみ(浮腫)を伴い、左右両側に出る。ヘリオトロープという花の色に似た、ピンクまたは紅紫色をしています。


ゴットロン徴候…手の甲側の、指関節上に出る、紅色または白色の丘疹(ふくらんだ皮疹)。


ひざとひじの外側の紅斑…ピンク、紅紫色、黒ずんだものなどさまざま(手くびの甲側に出ることもある)です。


V字ネック型紅斑…くびから前胸部にかけて、日光が当たる部分に、Vネックの服を着たような形で出る皮疹です。


顔面紅斑ときに蝶形紅斑もあります。内眼角の紅斑は皮膚筋炎に特徴的です。


頸部の紅斑…くびに出る皮疹。


多形皮膚萎縮症…おもに胴体に出ます。色素沈着、脱色、血管拡張、萎縮がみられます。


顔面や胴体に黒ずんだ色素沈着…目焼けした状態に似ていますが、日焼けではなく、ステロイド治療で白く戻ります。


かゆみの強い皮膚炎…がんと共存したときに強く出ますが、がんのない皮膚炎でも出る。小児では、アトピー性皮膚炎とまちがわれることもあります。


紅斑が、ときに皮膚の破壊、壊死、腱の露出、ポケット形成へと至ることがあります。(無菌性)。腰の仙骨部分では、褥瘡(床ずれ)のような状態になります。痛みはありません。


小児の場合…皮膚の血管炎(皮下出血、潰瘍など)。また、筋肉や皮下組織に石灰の沈着が起こる。小児皮膚筋炎の半数にこの石灰化がみられるが、成人では稀です。
※このうち、①、②、③は皮膚筋炎の典型的な皮疹。皮膚筋炎の人の85%にみられます